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 2017.2.21
 ベントレー・システムズ CEO グレッグ・ベントレー 氏
 「CONNECT Edition」でインフラ・プラントの統合管理が可能に
 クラウドが作り出す新領域で、向上する生産性

ベントレー・システムズがこの数年、クラウドを利用した「CONNECT Edition」を積極的に売り込んでいる。クラウド上でシステム同士がつながり、従来に無かった機能の向上も実現できる。これにより、インフラやプラントのライフサイクルをシームレスかつ統合的に管理できるようになった。
従来のソリューションにクラウド環境を与えるだけで、ソリューションは広がりを見せている。ベントレー・システムズのCEO兼社長・会長のグレッグ・ベントレー氏に「CONNECT Edition」を軸とする事業戦略などについて聞いた。


 
  グレッグ・ベントレー(Greg Bentley)氏
1991年にベントレー・システムズに4兄弟とともに経営に参加したが、1991年から2005年までは、自ら設立したファイナンシャル・トレーディング・ソフトウェア企業に勤務した。

ウォートン大学(ペンシルバニア州)で、財政学と意思決定科学のMBAを取得している。


















「世界とつながる」、クラウド

ENN ベントレー・システムズが現在、売り込んでいる「CONNECT Edition」は、クラウド環境で提供されソリューションですが、日本には、クラウドの使用を禁止している企業が少なくありません。小誌のアンケート調査でも、使用を禁止している企業は45%もあります。この状況をどのように御覧になりますか。

グレッグ まず、そういった企業には、一日も早くクラウド化していただきたいと思います。

クラウドに移行できない理由は、いくつかあると思います。その中には、インハウスのシステムを作っていることが障害になるケースもあります。しかし、ビジネスがグローバル化すれば、クラウドは世界中で浸透していますから、必然的にクラウド化しなければならなくなると思います。

ですから、必然的にクラウド化せざるをえなくなると思いますから、今後
については楽観的に見ています。

実際、エンジニアリングアプリケーションは、依然としてデスクトップで動いていますが、グローバルでワークシェアリングしていくには、クラウドにつながる必要があります。

ENN クラウドの使用を禁止している企業は、セキュリティを気にしているようですが、この点については、いかがですか。

グレッグ 当社は、マイクロソフト社のクラウド・コンピューティング・プラットフォーム「Azure」を活用していますが、同社はクラウドについて、10億ドル単位の投資を行っています。

日本にも3カ所、データセンターを保有していますし、世界各地に同様の投資をしています。当然、セキュリティ対策にも万全を期しています。「Azure」で、セキュリティ上の問題が起こったこともありません。

ENN クラウドによるサービスに着目した理由を聞かせてください。

グレッグ ユーザーにとって、データがどこにあるかは大きな問題ではありません。仮に、マイクロソフト社のソフトで作成したデータであっても、それが自分のパソコンの中にあろうが、マイクロソフト社側のサーバーにあろうが、問題はありません。

重要なことは、データがいろいろある中で、システム的に結合して全体を見られるようにすることです。そのためには、分散しているデータをインテリジェントな形にして、スケジュールなどの意思決定に使えるようにする必要があります。

ENN ベントレーは長年に渡って、インターオペラビリティ(相互互換性)を重視してきました。クラウドはつながることで、メリットが確認できます。長年の戦略が意味を持って来ていると思います。

グレッグ 当社にとって、インターオペラビリティは優先度の高い戦略です。オープンスタンダードという考え方もありますが、問題点もあります。重要なことは、ソリューションとして、情報自体の自己説明的なパッケージ向けにすることです。データと同じ環境を必要としたり、データを作った時と同じ環境を相手に要求するのであれば、問題があります。

当社には、データ自体を説明できるソリューションとして、「i-model」がありますが、ET(エンジニアリング・テクノロジー)の領域では、「i-model」が有効だと思います。

シェルが実施した、プレリュードFLNGプラント建設プロジェクトでは、モジュールごとに異なる設計システムが使われていて、それを「i-model」を使って統合することにより、インターオペラビリティを確保しました。「i-model」が様々なフォーマットを格納できるという特徴が活かされたと思います。

ENN 現在日本では、国土交通省が「i-Construction」の普及に力を入れていますが、これについてはどのように御覧になっていますか。

グレッグ 目的をもっと広く持つ必要があるのではないでしょうか。生産性を向上し、競争力を高めるという目的は分かるのですが、画像データからモデルを作成するリアリティモデリングを取り入れるなど、幅広いニーズに対応できるようにする必要があります。

当社が日本に進出した約30年前には、日本語でソフトウェアを作ることがアドバンテージになりましたが、現在では、グローバルに使える物にしていく必要があります。


ヴァーチャルにプラント操業管理も実現

ENN 昨年、組織を「デザイン・モデリング」「アナリティカル・モデリング」「プロジェクト・デリバリー」「アセット・パフォーマンス」の4部門に再編しました。この狙いは何ですか。

グレッグ 以前は、テクニカルリソースについては、お客様のニーズに必ずしも、フィットする体制になっていませんでした。またリージョナルに分かれていました。このため、タレント管理の面で問題がありました。

組織再編の目的は、お客様がより良い成果を上げるためのアカウントチームを容易に作ることによって、価値を高めたいと考えました。

例えば、EPC向けにプロジェクトマネジメントサービスを提供する場合に、「プロジェクト・デリバリー」部門から人材を集めてきて、アサインして、より良いサービスを提供します。

ENN 最近は、プラント操業の安全にも取り組まれています。

グレッグ プラントのオーナー・オペレーター向けに、操業をデジタル化するソリューションを提供しています。これを「ゴーイング・デジタル」と呼んでいますが、デジタル化するにあたって、オーナー向けにOT(オペレーション・テクノロジー)のデータを戦略的提携関係にあるシーメンスのクラウド情報基盤「MindSphere」のテクノロジーを使うことによって接続しています。これにより、AIインフラストラクチャを構築します。

AIインフラストラクチャのデモでは、アバターを使って、ヴァーチャル化するのですが、安全を確認するためのデモを行っています。さらに、リアリティモデリングの技術を使って、アバターを使ったコンディションの確認もできます。

これを活用することで、メンテナンスの問題の発見や、配管のバイパスの確認もできます。

ENN プラントの解析という点では、いかがですか。

グレッグ AssetWiseのAPM(アセット・パフォーマンス・マネジャー)でいうと「Amulet」というソリューションを活用して、解析に活用しています。

エンジニアリングモデルとアナリティックプロセスについては、「i-model」というデータパッケージがありますが、これにパッケージ化してメンテナンス部門での意思決定に役立てる取組を行っています。

今年の秋には、アナリティックデータとエンジニアリングモデルを統合したパッケージで何ができるかという改善を行いますから、新しい試みを発表できると思います。

ENN この分野でも、クラウドを活用することで、新しいソリューションがあるのではないでしょうか。

グレッグ マイクロソフトの提供するAzureに「Azure Stack」というのがあって、これを使って、マイクロソフトのBI(ビジネス・インテリジェンス)ツールである「パワーBI」を使うことができます。これはAIに活用すると、マシンラーニングに使うことができます。

このマシンラーニングで何ができるかというと、予測が可能になります。データから予知することができるのですが、その例としては、橋梁の強度を調べる場合に、データをマシンラーニングしたうえで、ビデオで解析することで予知も可能になります。

また、いくつかのシステムによって、分析する場合には、ネットワークモデルを使って、分析することも一つの方法として考えられます。クラウドを活用することで、解析分野でも大きなイノベーションがあります。

ENN ありがとうございました。



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