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  プラントコストインデックス 「ENN-PCI」 2024年 第1四半期
AACE International 日本支部
ENN-PCI 委員会

1. はじめに

2024年第1四半期(1〜3月期)のENN-PCI 図1に示す通り前四半期からわずかな上昇となった。年初から世界の経済はインフレが減速する過程にあったが、IMF、OECDは世界全体の実質成長率の見通しをほとんど変えていない(最新見通しIMF3.2%、OECD3.1%)。

今後緩やかな物価上昇と経済成長が共存する「適温経済」への移行を期待したいが、欧米各国の政局は流動的である。いわゆる民族右派/急進左派のいずれにしても、主導権を握った場合、積極財政の指向から景気の浮揚効果はあっても、一方で財政規律への懸念を生じさせるので当該国の通貨は弱含みとなる。

 図1 プラントコストインデックス ENN-PCI の推移


2. ENN-PCI(コスト要因)および ENN-PCI(コスト+需給要因)

それぞれの指標を表2、表3に示す。

  ・表2 ENN-PCI(コスト要因)PDFをダウンロードする
  ・表3 ENN-PCI(コスト要因 + 需給要因)PDFをダウンロードする


  ※PDFを御覧頂くには、ENN 2024年7月25日号(Vol.558)
   「プラントコストインデックス ENN-PCI」 50ページに掲載されている
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3. 世界経済

米国経済には漸く景気の減速傾向が現れ始めた。6月の経済指標では、ISM非製造業景況感指数の新規受注、支払価格が低下、雇用統計では雇用者数は横這いだが平均賃金の伸びが鈍化した。このまま景気がソフトランディングできるか注目される。欧州はインフレの鎮静化とともに景気は底をうったが、英独などは未だ浮揚感に欠けた段階に留まっている。

中国の不動産不況は、住宅販売額や販売面積等指標での違いはあるが前年比で約2-3割の落ち込みと推定され深刻さの度合を増している。地方財政もほぼ全国の行政区で赤字になっている。消費の落ち込みも厳しい。一方、輸出はCCFI(*1)が年初から上昇しており物量面での落ち込みは見られないがEVで顕在化したEUとの対立が示すように補助金頼みの低価格品の輸出攻勢は各国の関税率引上げの対抗策に直面している。

原油は、需給面(中国の不況、米国の景気減速等)において現状の水準から大きく上昇する要因はないが、地政学上の危機は未だ燻っており注意が必要である。

 *1 CCFI:中国輸出コンテナ運賃指数 China Containerized Freight Index
      バルチック海運指数に次ぐ影響力のある海運貨物指数


   表1 反応器類(コスト要因PCI)
                   2000年=100
   ■プラント計
 


4. 我が国の経済

実質成長率が3四半期連続でマイナス以下になったにも関わらず企業の景況感は堅調さを維持してきたが、自社の業績見通しに若干の強弱感が現れている。実質賃金は漸くプラスに転じる見込みだが、消費活動の回復への期待は企業業績の見通しからは見いだせない。

但し、設備投資計画は企業規模、業種を問わず増加している。深刻な人手不足のためデジタル化や省人化の投資を迫られている。(2024年6月法人企業景気予測調査、日銀短観業況判断DI等)

為替は日米金利差で説明できる水準から20円近くも円安に振れた状態が続いている。前回(2023年第4四半期)も述べたとおり円高を阻む構造的要因は多い。新NISAによる外国株投資信託の購入も新たなドル需要となる。


5. ENN-PCIの変動要因

ENN-PCI(コスト+需給要因)は237.2と1.3ポイントの微増となった。主要材の厚中板は下落から上昇へ転じているがほぼ横ばい、ステンレス板は下げ止まっていない。材料は横ばいで推移しているが人件費や企業利益が上がっているため機材価格や工事費も緩やかな上昇傾向にある。


6. ENN-PCIの将来予測

2024年第2四半期以降の将来予測値を表4に示す。

鉄鉱石、原料炭の国際先物価格は横ばい、ニッケルも底値圏で推移しており、材料の先高観はないが、ドル円レートが今期平均148.6円から直近160円超えと7%以上も下落しているため材料価格は徐々に上昇すると予想する。

また2024年の春闘で賃上げ率は平均5.1%となり33年ぶりの5%超えの高水準となった。今後、人件費も上昇すると予想され、ENN-PCIも緩やかに上昇していくと考えられる。



  表4 ENN-PCIの将来予測値                           2000年=100

  ※ AACE International は米国に本部を置く国際コストエンジニアリング推進協会
   (The Association for the Advancement of Cost Engineering International)である。
   その日本支部(略称JSCE:Japan Section of AACE International)がENN-PCI委員会を設立し
   ENN-PCIの執筆を担当する。 ご参考:
https://www.aace-japan.org/


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