プラントコストインデックス 「ENN-PCI」 2023年 第1四半期
AACE International 日本支部
ENN-PCI 委員会 |
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2023年第1四半期(1〜3月期)のプラントコストインデックスENN-PCIを算定し、2000年からの推移を図1に示した。2020年3Qから反転し上昇中である。
欧米はともに、総合のインフレ率(CPI)は引き続き低下しているが、コアCPI(食料品とエネルギーを除いたインフレ率)が予想を超えて高止まりしており、政策金利のさらなる利上げは避けられない。欧州はユーロ圏、英国ともに2四半期続いて実質GDPがほぼゼロ成長の状態が続いている。
図1 プラントコストインデックス ENN-PCI の推移 |
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2. ENN-PCI(コスト要因)および ENN-PCI(コスト+需給要因) |
ENN-PCI(コスト要因)およびENN-PCI(コスト+需給要因)の分類別の指標をそれぞれ
表2、表3に示す。
・表2 ENN-PCI(コスト要因)PDFをダウンロードする
・表3 ENN-PCI(コスト要因 + 需給要因)PDFをダウンロードする
※PDFを御覧頂くには、ENN 2023年7月25日号(Vol.536)
「プラントコストインデックス ENN-PCI」 52ページに 掲載されている
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米国は、製造業には景気の減速を示す指標が現れているが、サービス業をはじめ非製造業は好況を維持している。人件費の高止まりに加えて住宅市況にも持ち直しの兆しがある。CPIは4.0%まで低下したが、コアCPIが1月以降も5%台で推移する状況ではさらなる利上げは避けられない。それが景気を下押しする可能性がある。(CPI、コアCPIのピークはともに2022年6月の9.1%、6.8%)
中国は6月の製造業PMIが49.0であり、3カ月連続で50を下回った。コロナ政策の転換による行動規制の解除で個人消費は若干持ち直しているが、全体の需要は期待された程回復していない。不動産業界の不況も続いており、海外からの投資も減少している。米中の対立と相まって経済の先行きに不安を抱かせる要素が増えている。一方で、世界の工場である中国の景気低迷は金属、鋼材価格等ENN-PCIを構成する資材のコストを低位安定させる要因にもなる。
表1 反応器類(コスト要因PCI) 2000年=100
■プラント計
海外景気の落ち込みの影響が先行き懸念されるが、総じて景況感は堅調である。本年1−3月期のGDP(年換算ベース)は実質で2.7%、名目で8.3%上昇した。経済安全保障の高まりを背景に半導体工場の新設や他の業種でも工場の国内回帰の計画が増えており、2023年の民間設備投資はバブル期並まで回復すると予想される。
日銀の資金循環統計では、企業部門の資金需要が昨年から徐々に余剰から不足の方向に傾いている。長年の内部留保優先の姿勢を改めて投資にも資金を向ける兆しが見られる。今年の春闘での平均3.58%の賃金増は29年振りの3%超えになった。多くの業種で人手不足の状態であり、賃金上昇は続くと思われるが、実質賃金が上昇に転じて定着するまで政策の後押しが必要である。
ENN-PCIは本四半期も高値を更新した。但し、材料費で影響の大きい厚板が下落に転じ、ステンレス鋼板も横ばいとなったため、機材費(機器・機械類)は下落となった。工事費は工事材が未だ上昇中であり、建設業の営業利益が本四半期は増加したため、機材費の下落を上回りENN-PCIとしては上昇した。
2023年第2四半期以降の将来予測値を表4に示す。
材料費は厚板等ピークアウトするものも出てきている。原料(鉄鉱石、石炭、銅、ニッケル)を見ると、主に中国経済の足踏みが影響して価格は下落基調である。また、海運市況も落ち着きを取り戻し、新型コロナ感染拡大前の水準まで下落している。工事費については半導体工場の新設案件が多く、化学工業の設備投資意欲も旺盛なため、下落はまだ先と考えられる。
表4 ENN-PCIの将来予測値
2000年=100
※ AACE International は米国に本部を置く国際コストエンジニアリング推進協会
(The Association for the Advancement of Cost Engineering International)である。
その日本支部(略称JSCE:Japan Section of AACE International)がENN-PCI委員会を設立し
ENN-PCIの執筆を担当する。 ご参考:https://www.aace-japan.org/ |
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