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  プラントコストインデックス 「ENN-PCI」 2024年 第4四半期
AACE International 日本支部
ENN-PCI 委員会

1. はじめに

2024年第4四半期(10〜12月期)のプラントコストインデックスENN-PCIを算定し、2000年からの推移を図1に示した。最近2年間は各期1ポイント前後の緩やかな上昇が続いた後、前々期は4.5ポイント、前期は1.6ポイント、今期は0.3ポイントと続き、上昇トレンドは落ち着いてきた。

米トランプ政権の関税による通商政策が世界中に成長鈍化とインフレ再燃の懸念をもたらしている。3月時点でOECDの世界経済見通しは、2025年の世界の実質GDP成長率を0.2%下方修正し3.1%としたが、4月2日の米国の相互関税発表前のことであり、更に下押しされる恐れが高い。


 図1 プラントコストインデックス ENN-PCI の推移


2. 世界経済

米国ではトランプ関税の影響は、相互関税発表以前から現状の判断、先行きの予測を示す各景況感の指標(*1)の結果に表れており、物価上昇と景気減速が同時に起こるスタグフレーションの発生が懸念されている。今後の成り行きは景況感だけではなく、実体経済の活動を示す指標(*2)も併せて見ていく必要がある。

中国は深刻なデフレからの出口は見えていない。消費者物価も1年間かろうじてプラスで推移したが、2月は前年同月比△0.7%に下がった。2024年の海外からの直接投資は44億ドルだが、過去最高であった2021年比でわずか1.3%に過ぎない。

 原油価格は、世界的な景気後退への懸念による需要の弱まりから軟調に推移する可能性は高いが、米国のイラン、ベネズエラに対する強硬な敵対姿勢、ウクライナの停戦交渉の行方など供給面に制約を生じさせる要因には注意が必要である。

  (*1)景況感指数:(ソフトデータ)
   コンファレンスボードの消費者信頼感指数、ISM製造業景況感指数等、人や企業による景気の見方
   をアンケート方式で調査し集約したデータ。


  (*2)実体経済の活動を示す指標:(ハードデータ)
   小売売上高、鉱工業生産、雇用統計等、実体経済の活動を統計的に数値化した指標。



   表1 反応器類(コスト要因PCI)
                   2000年=100

   ■プラント計


3. 我が国の経済

3月の日銀短観他の調査では、企業規模を問わず、前回調査から人手不足感は更に深刻化しているが、2024年度の設備投資の実績見通しも四半期ごとに縮小されており、その影響が見て取れる。

トランプ関税の影響、低調な国内消費等を踏まえたと思われるが、法人企業予測調査では、2025年度の業績見通しは控えめなものに留まっている。(全産業で前年度比:売上高1.8%、経常利益▲2.5%、設備投資5.9%)

今年の春闘は、2024年を超える賃上げ率になる見通しであり、特に中小企業が昨年度実績を0.5%程上回る見込みなのは好ましい傾向だが、目下、消費者物価は欧米主要国を上回る水準で推移しており、実質賃金が継続的に前年度比プラスに転じる時期の見通しは立っていない。

4月前半時点で投機筋の円買いが史上最高の持高にもかかわらず、150円前後の水準から大きく円高に動いていない。底流にある円安基調に変化はないとみるが、トランプ関税政策が為替に与える波及経路を見極めることは困難である。


4. ENN-PCIの変動要因

ENN-PCI(コスト+需給要因)は244.2となり0.3ポイント上昇した。主要材の厚中板は下落、ステンレス板は小幅な下落となった。パイプ、形鋼も下落し、鋼材価格はピークを打った形となっている。一方、回転機、機械類の指数は上昇したため、機材全体は微増となった。

工事費は土建工事が工事材の下落により下落したが、その他の工事は人件費、営業利益の増加で上昇した。工事全体は微減となった。

エンジ会社の設計費が引き続き上昇しているため、ENN-PCIは微増となった。

  ・表2 ENN-PCI(コスト要因)PDFをダウンロードする
  ・表3 ENN-PCI(コスト要因 + 需給要因)PDFをダウンロードする


  ※PDFを御覧頂くには、ENN 2025年4月25日号(Vol.574)「プラントコストインデックス ENN-PCI」
   54ページに掲載されているユーザー名・パスワードの入力が必要になります。



5. ENN-PCIの将来予測

鉄鉱石の先物価格は、100ドル/トン水準付近で横ばい、原料炭は100ドル/トン割れの水準となっている。また、ニッケル価格(LME)は16,000ドル/トン近辺で推移していたが4月に入り急落し15,000ドル割れ寸前であり、銅価格も10,000ドル/トン近辺だった価格が9,000ドルを割り込む急落となっている。

これら資源価格の下落はトランプ関税により、貿易の混乱、経済成長の鈍化が懸念されるためである。ENN-PCIは25年4−6月期以降下落が予想されるが、どの程度の下落となっていくのか米国と諸外国の交渉など今後の成行きに目途が立つまで見通しを立てられない。



  ※ AACE International は米国に本部を置く国際コストエンジニアリング推進協会
   (The Association for the Advancement of Cost Engineering International)である。
   そのAACE日本支部がENN-PCI委員会を設立し、我が国のコストインデックスとして
   ENN-PCIの執筆を担当する。 ご参考:
https://www.aace-japan.org/


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