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  プラントコストインデックス 「ENN-PCI」 2023年 第3四半期
AACE International 日本支部
ENN-PCI 委員会

1. はじめに

2023年第3四半期(7〜9月期)のプラントコストインデックスENN-PCIを算定し、2000年からの推移を図1に示した。前四半期からほぼ横ばいとなった。欧米のインフレは最後に残る賃金インフレも鎮静化しつつあり、中国の景気後退と合わせてENN-PCIの上昇を抑制する要因になっている。


 図1 プラントコストインデックス ENN-PCI の推移


2. ENN-PCI(コスト要因)および ENN-PCI(コスト+需給要因)

ENN-PCI(コスト要因)およびENN-PCI(コスト+需給要因)の分類別の指標をそれぞれ表2、表3に示す。

  ・表2 ENN-PCI(コスト要因)PDFをダウンロードする
  ・表3 ENN-PCI(コスト要因 + 需給要因)PDFをダウンロードする


  ※PDFを御覧頂くには、ENN 2024年1月25日号(Vol.546)
   「プラントコストインデックス ENN-PCI」 50ページに掲載されている
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3. 世界経済

2024年の世界経済はインフレ抑制のための政策金利の上昇が影響して一定の減速が見込まれる。OECDが2023年11月に発表した実質GDP成長率予測は全世界2.7%(2023年2.9%)、米国1.5%(同2.4%)ユーロ圏0.9%(同0.6%)、日本1.0%(同1.7%)である。

米国は、FRBが景気の減速を見越して、年内に0.25%×3回の政策金利の利下げを想定しているが足元の景気はまだ底堅く利下げの開始時期を見通せていない。

中国は不動産不況が経済全体に波及して構造的デフレに陥っている。CPI* 1は2023年4月以降前年同月比0%前後で推移し11月は▲0.5%と下落幅が拡大した。海外からの投資も7-9期は初めて差引きマイナス(新規投資<撤退・事業縮小の資本回収)になった。

一方、製造業の景況感指数(国家統計局と財新*2のPMI*3)では明らかな悪化を示す兆候はないが、今後デフレの下押し圧力が製造業にも及んでくる可能性は高い。

原油は、中東の地政学上の危機にも関わらず急騰していない。OPECプラスの足並みの乱れと米国の増産対応が背景にあるが、情勢の急変がない限り、安定した価格の推移が続くと見られる。


 *1 CPI:消費者物価指数Consumer Price Index
 *2 財新:中国民間の経済メディア企業
 *3 PMI:購買担当者景気指数 Purchasing Manager’s Index
    購買担当者を調査対象にした景気指標


   表1 反応器類(コスト要因PCI)
                   2000年=100
   ■プラント計
 


4. 我が国の経済

産業界全般では、現状は堅調、2024年前半も勢いは鈍化するが業績は上向きを維持するとの見方が大勢である。但し、製造業の中小企業が先行き弱気なのは気掛かりである。(2023年12月法人企業景気予測調査、日銀短観業況判断DI等)

日本経済は物価と賃金上昇の好循環を目指す転換点にいる。日銀が政策判断において重視するコアCPI*4は既に2%を上回って推移しており、春闘の結果次第でゼロ金利を解除すると見られる。それには、前年比マイナスで推移する実質賃金をプラスに押し上げる水準の賃上げが必要である。

為替は日米金利差が縮小すれば円高方向に向かう。但し、貿易収支の赤字傾向、対外直接投資の増加など円高を阻む構造的要因は多い。円高進行は限定的になると思われる。


*4 コアCPI:CPIから変動の大きいエネルギー・食料品を除いた物価指数


5. ENN-PCIの変動要因

ENN-PCI(コスト+需給要因)は前四半期の234.8から235.4となり、0.6ポイント(0.25%)増に留まった。主要機材の厚板、ステンレス板は横這いであり、工事材料、機器完成品も、生コン、電力ケーブル、変圧器で3〜4%程度上昇している程度で価格は総じて落ち着いている。


6. ENN-PCIの将来予測

2023年第3四半期以降の将来予測値を表4に示す。

機材、工事材料の原料となる鉱物資源価格(鉄鉱石、原料炭、銅、ニッケル等)は銅、原料炭が足元で比較的底堅い動きを見せている他は安定している。

今後の人件費は、前述のとおり賃上げの動向に左右される。建設業界を含む非製造業の部門で恒常化しつつある人手不足は少子化と相俟って、中長期的に人件費の定常的な上昇に繋がっていく。

  表4 ENN-PCIの将来予測値                           2000年=100

  ※ AACE International は米国に本部を置く国際コストエンジニアリング推進協会
   (The Association for the Advancement of Cost Engineering International)である。
   その日本支部(略称JSCE:Japan Section of AACE International)がENN-PCI委員会を設立し
   ENN-PCIの執筆を担当する。 ご参考:
https://www.aace-japan.org/


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