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日揮が富士通に、J-SYSの全株を譲渡
3月31日付で実施、J-SYSは富士通グループに   
         2016.2.15

「結局のところ、J-SYSの売上が伸びなかったことが要因」

2月12日夕刻、日揮が100%株式を保有する子会社、日揮情報システム(J-SYS)の株式、全株を富士通に譲渡するという一報が舞い込んだ。J-SYSは日揮グループの一員として、日揮のシステム構築を担うとともに、外部には、設備管理システム「PLANTIA」を販売するなど、一定の存在感を持っていた。現在でも、数十名のJ-SYS社員が日揮本社に常駐して、システム構築を行っている。

にもかかわらず、日揮がグループ企業から離脱せざるをえなくなった理由は、長期間に渡って、売上高が伸びなかったことだ。あるJ-SYS社員は「過去2~3年、社内で持ち上がっては消えていた話が現実になった」と言う。

12日午後3時、J-SYS本社に集められた社員は、全株式の富士通への譲渡について、中島昭能社長から説明を受けた。祭日と土曜日の間の金曜日で、休暇を取る社員もいた中、J-SYS社員は複雑な思いで中島社長の話を聞いた。

J-SYSなりに、成長のための努力を行ってきたが、結果が伴わなかった。その結果が、日揮本社の決断だった。全株をICT企業の富士通に譲渡し、新たな経営の下で成長を期す。それが最善の策と判断された。


売上高61億円、外販比率6割

  日揮情報システムのあるMMパークビル 
発表文によれば、現在、日揮が保有している100%の株式は全株、3月31日付で富士通に譲渡されるというもの。

J-SYSの資本金は4億円で、2015年3月期の売上高は61億円。売上高の4割が日揮グループ向けで、外販は6割。従業員数は320名。


J-SYSは1983年に、日揮の情報システム部門が分離独立して設立され、日揮をはじめ、グループ各社の情報インフラ・基幹情報システムの開発および運用・保守サービスを担ってきた。同時に、建設会社や官公庁など向けにもシステム開発および運用・保守サービスを担うとともに、建設会社や官公庁など向けにもシステム開発、運用・保守サービス、パッケージ製品販売の分野において、事業を展開してきた。

にもかかわらず、競争の激しい分野でもあり、なかなか業績は伸びなかった。そこで日揮は、「昨今の急速なICT技術の進化の中で、日揮はJ-SYSがICTソリューション企業として、さらに高度な技術力およびソリューション力を獲得して、成長・拡大を果たし、日揮グループに対して従来以上に高品質なシステムとサービスを提供するとともに、建設分野および設備保全管理分野などのユーザに向けた外販事業を強化するためには、革新的なテクノロジーを活用しICTソリューションを提供する富士通グループの一員として、事業を展開することが最善であるとの経営判断に至った」。

ここで問題となるのは、日揮傘下にあるJ-SYSが富士通傘下に入ることだ。ある業界関係者は、「日揮は、ソフトウェアでもかなりカスタマイズをして使っている。そのカスタマイズに対応できるのは、グループ企業しかない」と、指摘する。要は、日揮の要望を聞き入れて、それをソフトウェアに反映できるのは、グループ企業ならではということだ。

この点についても「日揮は今後、情報インフラ・基幹情報システムの開発および運用・保守サービスなどにおいて、富士通グループとなるJ-SYSを通じて提供を受ける高度で競争力のあるサービスを活用し、日揮グループ全体の競争力強化を目指す」と、している。

日揮グループは富士通傘下に入った、J-SYSからICT技術を受け、いっそうの競争力を果たすとしているが、事は思惑通りに進むのだろうか。

ただ、こうした日常業務への配慮を考えていたら、今回の決断はできなかったはずだ。今回の決定が英断と言えるかどうかは時間が経つのを待つしかない。

一方、富士通は「J-SYSを通じて、日揮グループの情報システム子会社として、プラントエンジニアリング分野で培ってきたノウハウを活用し、建設分野おとび設備保全管理分野などのユーザに向けた外販事業の拡大と、新しいIoTソリューションの確立を目指す」とコメントしている。

この一報に接した、あるソフトウェア開発会社の幹部は「J-SYSには、若手の良い技術者もいる。経営が代わるこの時期は、不安にもなっているはず。ハンティングの好機」と、有能な人材の獲得を狙う。

こうしたリスクは織り込んでの決断のはず。富士通グループに入るJ-SYSが今後、どのような道を歩むのか、見守りたい。








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