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 2017.2.21
水力発電所建設プロジェクトでも威力を発揮する「TeklaStructures」
材料集計や建設スケジュール管理にも有効

トリンブル・ソリューションズの「TeklaStructures」は、BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)ソフトウェアとしてよく知られている。しかし、その機能は発電プラントの建設でも役に立つものが多い。製品図や立面図のみならず、打設リフト図、打設計画、鉄筋加工図、施工図、鉄筋やコンクリートの材料リストの作成にも、威力を発揮する。
また詳細で精度の高い設計を実現するという点においても、「TeklaStructures」は強みがある。わが国のODA案件をはじめ、世界の水力発電プラントの建設においても、積極的に活用されている

トリンブル・ソリューションズの構造設計ソフト「Tekla Structures」は、BIM(ビルデイング・インフォメーション・モデリング)や鋼構造物の設計に主に使用されるが、その機能は発電プラントの建設プロジェクトにおいても、威力を発揮する。

わが国のODAプロでも採用

ラオスのポリカムサイ県にあるナムニアップ川で建設が進められているナムニアップ1水力発電プロジェクト。出力290MWの水力発電所は、クリーンで再生可能な電気を供給し、ラオスの貧困の削減のみならず、環境および社会にも貢献する、重要な役割を果たす水力発電所の建設プロジェクトだ。

プロジェクトは、メコン川の支流ナムニアップ川に高さ148m、貯水池面積67k㎡のダムを建設し、290MWの電力を発電する事業だ。発電所はラオスの首都ビエンチャンから北東約150㎞のボリカムサイ県ボリカン郡に建設される。主発電所で発電される272MWの電力はタイに輸出され、副電力の18MWはラオス国内に供給される。

 
  ナムニアップ1水力発電所完成予想図
 
  水力発電所の鉄筋モデル 
 
  鉄筋モデル 
プロジェクトの事業主体となるのは、ナムニアップ1電力会社。同社は関西電力の100%子会社であるケーピック・ネザーランド社45%、タイ発電公社(EGAT)の子会社であるEGATインターナショナル(EGATi)社が30%、ラオス政府全額出資の投資法人であるラオ・ホールディング・ステート・エンタープライズ社が25%の出資比率で設立された。

プロジェクトには、国際協力事業団(現国際協力機構:JICA)、国際協力銀行(JBIC)、アジア開発銀行(ADB)、民間金
融機関の協調融資で、協調融資総額は6億4,300万円。

うち、JBICは、ラオスにおける水力発電プロジェクトに対する初のプロジェクトファイナンスとして2億ドルを限度とする融資を供与する。

プロジェクトは2014年1月に着工され、2019年1月に運転が開始される。水力発電所の建設を受注したのは、大林組だ。

プロジェクトの資金供与の一部
にプロジェクトファイナンスが採用されるため、発電所の運転開始が遅延することは資金の回収計画にも影響する。このため、プロジェクト遂行では納期の厳格な遵守が求められる。

厳しい納期を遵守するには、タイトなスケジュールでプロジェクトは遂行される必要がある。こうした条件をクリアするため、設計のソフトウェアには、トリンブル・ソリューションズの「Tekla Structures」が採用された。

水力発電所は、人里離れた山岳地帯に位置することが多く、複雑な地形と発電所のコンクリートの境界をモデル化することが最初の課題となった。また、発電所の建設には、様々な部材が使用されるため、求められるプロジェクトの品質を達成するために、トリンブル社の描画ソフト「Sketch Up」などとも組み合わせて「Tekla Structures」を使用した。

また、製品図や立面図、打設リフト図、打設計画、鉄筋加工図、施工図、鉄筋やコンクリートの材料リストの作成にも「TeklaStructures」が採用された。

「TeklaStructures」が採用された最大の理由は、複数のユーザがテクラモデルに同時にアクセスして作業できる環境が整っているからだ。統一性や整合性が取れたモデルや、図面データが常に最新の状態を維持している。また、「TeklaStructures」は他のCADソフトウェアと比較しても、詳細で精度の高い設計を実現する。設計者の視野を広げ、設計品質の向上を促進できる。このうえ、幾何学的な形状の寸法や空間距離、地形情報、その他の重要なデータセットはすべてパラメーター化されており、設計変更にも柔軟に対応できる。

図面や材料リスト、建設スケジュール、材料調達などの必要な情報は、許可されたプロジェクト関係者が必要な時に抽出できるようになっている。複雑な接合部を処理できるだけではなく、モデル内の干渉を検出し、建設段階で発生する可能性のあるエラーや欠陥を未然に防止できるのも、「TeklaStructures」が選択された理由だ。


スウェーデンでは、軸雑な地形でのコンクリート施工に威力

モデリングにおいても、ユーザインタフェースを重視した機能向上が図られた。
「溶接表示」においては、溶接形状が正確に表示されるオプションが追加され「正確-溶接マークなし」オプションが追加された。

スウェーデンのエデンスフォーセン発電所建設プロジェクトにおいても、「TeklaStructures」は威力を発揮した。

このプロジェクトで課題になったのは、特殊な形状をした可動式構造物や用水路トンネルのセクションウォールの設計、図面作成作業、そして背後に山がそびえる複雑な地形でのコンクリート施工だ。

 
  エデンスフォーセン発電所建設プロジェクト
  発電プラントモデル 
  発電プラントと放水路 
エデンスフォーセン発電所は、スウェーデンのソレフテオを流れるオンガーマン川に位置する。長さ100mの用水路と、その両側にため池が設けられた水力発電所だ。

このダムの安全性調査の実施結果に基づき、施主であるUniper社は安全対策のための補強工事を計画し、コントラクターであるWS
P社がその安全基準に基づく設計業務を請け負った。

WSP社は幅17mのセグメントハッチを備えた新しい用水路や、用水路トンネルの下流にある新しいセクションウォールのすべての
コンクリート部の設計に「TeklaStructures」を使用し、その詳細設計を行っ
た。

プロジェクトを視覚化するために、常に最新のBIMモデルが部材毎に色分け表示され、各種図面や帳票とプロジェクト関係者で共有された。

これらを実現するために、「TeklaStructures」による正確な鉄筋数量の把握、鉄骨ファブリケーター向けの機能や視覚化の様々な機能を有効活用し、製作から施工段階でのエラーを最小限にとどめ、施主へのリアルタイムでの報告を行うことができた。

また膨大な量の鉄筋を施工業者の作業効率を考慮しながら設計したり、施工段階においても、幅が大きく変化するコンクリート壁の屈折部の施工性検討など、様々な場面で求められる調整も活用された。

テクラのBIMモデルを使用することで、構造がより透明化され、部材の数量や形状の把握が瞬時に行われるようになり、作業工程の最適化や不具合の未然防止にも役立つ。

特に、強力なモデリング機能により、鉄筋配置などのモデリングが自動的に行われることで、設計段階からモデリングと図面作成を同時並行で効率的に進めることができる。

水力発電所を効率良く建設するのに、大きな役割を果たした。



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