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 2018.4.4
 内閣官房 日本経済再生総合事務局 参事官 川村 尚永 氏
 「Society5.0」に求められる規制改革とIT化
 革新的技術改革と規制改革で成長のフロンティアを目指す

 社会は、狩猟、農耕、工業、情報と変遷してきた。これからの社会に求められるのは、革新的な技術で個々のニーズに合ったサービスによる社会の課題の解決だ。そこで今、わが国政府が進めるのが、未来投資戦略「Society5.0」だ。IoT、ビッグデータ、人工知能(AI)、ロボットの先端技術をあらゆる産業や社会生活に導入するには何をすべきか。この問題に取り組む、内閣官房日本経済再生総合事務局参事官の川村尚永氏に、成長のフロンティアを目指す「Society5.0」について聞いた。



川村 尚永(かわむら ひさなが)氏

1996年、京都大学経済学部経済学科を卒業とともに、通商産業省(現経済産業省)入省。2013年経済産業省製造産業局通商室長兼国際プラント・インフラシステム・水ビジネス推進室長、2015年経済産業省大臣官房政策審議室企画官、経済産業省経済産業政策局産業組織課長、2016年経済産業省中小企業庁事業環境部企画課長、2017年内閣官房日本経済再生総合事務局参事官。


















ENN Society5.0について、説明してください。

川 村 アベノミクスの3本の矢である、金融・財政・成長戦略の一環ですが、その最新版と言えるのが未来投資戦略「Society5.0」です。

第4次産業革命(IoT、ビッグデータ、人工知能/AI、ロボット)の先端技術をあらゆる産業や社会生活で導入するには、何をすべきかという課題が浮上します。それには、「Society5.0」が必要です。社会は、狩猟、農耕、工業、情報と変遷してきましたが、これからは、革新的な技術で個々のニーズに合ったサービスによる社会の課題を解決することが求められます。これらを解決することで、成長のフロンティアへと向かおうとしています。


規制改革・行政手続簡素化・IT化を一体的に推進

ENN 成長のフロンティアに向かうには、何をすべきでしょうか。

川 村 戦略分野として、①健康寿命の延伸、②移動革命の実現、③サプライチェーンの次世代化、④快適なインフラ・まちづくり、⑤FinTech、があります。

これらの課題に取り組むのに、わが国の強みについて、考えてみると、「モノづくり」「社会課題の先進性・大きさ」「リアルデータの取得・活用可能性」が上がります。こうしたわが国の強みを活かしながら、それぞれの課題に取り組みます。

その一方で、横の課題もあります。AI、IoT、ビッグデータの時代になって、どうデータを利活用するかという問題があります。そこで必要なのがデータ利活用の基盤制度の構築です。具体的には、公共データのオープン化、社会のデータの流通促進、知財・標準の強化が必要です。

 また教育・人材力の抜本強化に加え、イノベーション・ベンチャーを生み出す好循環システムを構築します。ここで重要になるのは、「学」という中核機能の強化です。強い分野に集中投資して、ベンチャーを育成します。こうしたことが価値を作るうえで重要です。

ENN これまでにおっしゃったことを推進していくのに、規制面での制約は無いのですか。

川 村 価値の最大化を後押しする仕組みはあるのですが、たしかに規制が邪魔になります。そこで今国会に「規制のサンドボックス」の創設に関する法案を提出しています。この法案では、関係省庁との間で、効果的な調整権限を発揮でき、イノベーション社会の実装による成長戦略を政府横断的に推進できるようにします。

同時に、規制改革・行政手続簡素化・IT化の一体的推進にも取り組みます。企業の「稼ぐ力」を強化するのであれば、コーポレートガバナンス改革を形式から実質へと取り組んでいきます。

さらに、公的サービス、資産の民間開放、国家戦略特区、サイバーセキュリティ、シェアリングエコノミーといった課題が「Society5.0」の周辺にあります。

ENN 海外市場については、いかがですか。

川 村 海外の成長市場の取り込みという点では、インフラシステム輸出もあります。最近は原油価格の影響で産油国でプロジェクトの動きが鈍くなるような問題もありましたが、高速鉄道の計画もあります。

このほかの重点分野としては、医療分野があります。健康寿命の延伸で、遠隔医療、データ・AIの活用、予防健康作りもあります。現在、取り組んでいるのは、医療のデータの利活用による予防健康作りの強化です。その中でICTを活用した医療や遠隔医療があります。

移動革命の実現では、自動走行の実験を公道でできるようにします。この。分野でも、データが重要ですが、実証は世界に先駆けてやりたい。また隊列走行は、先頭車両にドライバーが乗車して運転するものですが、後続車両は自動走行で無人で走行します。公道では、全国で10カ所以上の場所を決めて実証試験を行います。

ENN 実証試験は、これからですか。

川 村 すでに始まっています。ドローンを活用した画像撮影、普及しているドライブレコーダの活用、地図情報を活用も行い、自動走行の実証を行います。これが実現しやすくなるように、制度改正に取り組みます。

ENN 小型無人機(ドローン)の活用については、いかがですか。

川 村 2018年に山間部などにおける貨物配送を実施します。2020年代には、都市でも安全な荷物配送を本格化させるために、補助者を配置しない目視外飛行などを可能にするための技術開発や精度的対応を推進します。


会社設立の効率化で起業を促進

ENN 「快適なインフラ・まちづくり」という点では、どのように取り組まれますか。

川 村: まず、「i-Construction」に取り組みます。2019年までに橋梁・トンネル・ダムといった土木・舗装など以外の工種や維持管理を含む、すべてのプロセスをICTの活用の対象を拡大します。今年中に3次元データ利活用方針を策定し、2019年までにオープンデータ化に向けた具体的な利活用ルールを整備します。自治体の工事を受注する中小建設企業にICT土工のメリットや基準を浸透させるため、実工事での実演型支援を実施します。

ENN FinTechについては、いかがですか。

川 村 : FinTechについては現在、利用基盤などの整備に取り組んでいます。

ENN 「Society5.0」が実現する時代にどのような人材が求められますか。

川 村: 人の雇用の問題では、成長分野に人材が移動するのを円滑にすることが重要です。求められる技術が変化しますから、「学び直し」や習得するための環境整備が大事になってきます。シェリングエコノミーで、労働力をシェアしていけば、兼業・副業、双方にメリットがあります。

また行政が紙、印鑑、体面を要求するので、民間が電子化できないという弊害も指摘されています。そこを規制改革とデジタル化をセットで取り組み、電子化を実現すれば、民間の業務フローも変わるのではないでしょうか。行政からの生産性革命にも取り組んでいます。会社設立もオンラインで、ワンストップでできるようにします。

ENN わが国は、ベンチャーの設立が少ないとはよく言われます。

川 村 会社設立手続は、先進国で最下位クラスという国際的評価ですから、改善します。この点は、民間の方が進んでいて、会社の定款を作る支援サービスがウェブ上にありますし、電子契約も進んでいます。実際、韓国ではワンストップのポータルサイトがあって、そこで、会社設立が可能です。政府のBPR(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング)は規制改革でもあります。現行の制度を前提にIT化するのは、かつて失敗した歴史があります。それを繰り返さないことが重要です。

現在、わが国で会社を設立するには、同じ申請書をいくつも、複数の役所に提出しています。また代表者の印鑑登録が求められますが、これも印鑑を登録しなくても良いようにしていきます。

規制価格とIT化を進めながら、会社設立をしやすくしていきます。

ENN 「Society5.0」を進めるうえで、現行の規制が障壁になる可能性があるということですね。そのために、規制改革とIT化を同時に進める。

川 村 自動走行でも、大きな問題は「事故が起きた時に、誰が責任を負うか」ということです。今は、人が運転していることが前提に国際的な制度ができていますから、どう修正すべきか。この問題にも取り組んでいく必要があります。

ENN 「Society5.0」に期限はあるのですか。

川 村 とりあえず、2020年までに可能な限り推進していきます。

ENN ありがとうございました。



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