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 2020.6.12
プラント屋内設備点検に「新たな眼」を提供するブルーイノベーション
ドローン・インテグレーターとして、サービス提供

 ドローンを活用した、プラントの点検では、これまで目視できなかった箇所の点検を可能にするというメリットがある。ドローン・インテグレーターのブルーイノベーションは、スイス・フライアビリティ社と業務提携契約を締結し、同社のドローン「ELIOS」によるプラントの点検サービスを行っている。「ELIOS」は、ドローンの本体をカーボン製の球形フレームで覆い、障害物に衝突しても飛行を継続できる。またセンサーにより、位置の測位が可能なため、GPSが入らない屋内での使用も可能だ。このため、プラントのタンクや橋梁の橋桁の点検でも使用できる。すでに、従来は目視が不可能だった箇所の点検を数多く可能にしており、プラントの点検において、様々なメリットを創出している。


 今年1月、経済産業省は出光興産・千葉製油所において、プラントのタンク内部で、ドローンの飛行試験を行った。

 この実証試験で、ドローンを提供したのが、ドローン・インテグレーターのブルーイノベーションだ。

 ブルーイノベーションは、黎明期から、ドローンの運用を進め、様々な側面からインフラ整備のサポートをはじめ、ドローンの積極的な利活用の推進、メーカーとの機体共同開発などに取り組んできた。

 その中で、GPS信号が入らない屋内などの場所で、安定した飛行で点検作業が可能なドローンサービスに対応している。

 通常、屋外のドローンはGPSを活用した位置即位により、正確に飛行するが、工場内や屋内の環境では、GPSが入らず、一般的なドローンを活用することができない。

 こうした屋内環境で使用できるドローンによる点検・検査をブルーイノベーションは実施している。

 「ELIOS2」の飛行


GPSが入らない屋内のプラント点検で威力

ブルーイノベーションでは、センサーを活用して、ドローンの位置即位を行い、GPSが入らない屋内でのドローンの正確な飛行を可能にしている。

 ブルーイノベーションが屋内設備点検用ドローンとして活用しているのは、スイス・ローザンヌに本社を置く、フライアビリティ社の「ELIOS」だ。

 フライアビリティ社の「ELIOS2」


 ブルーイノベーションは、2018年7月にフライアビリティ社と業務提携契約を締結し、同社の「ELIOS」を活用した、屋内点検分野における、新たなソリューションサービスを展開してきた。

 「ELIOS」はコンパスエラーが無く、パイプラインや狭小空間で安定した飛行が可能だ。ブルーイノベーションでは、ボイラーやタンク、工場の高所など、狭小空間の点検において、着実にユーザー層を広げてきた。

 「ELIOS」は、直径40㎝のコンパクトサイズで、球形のカーボン保護フレームの内部にドローンが装着されている。

 特殊な保護フレームを装備しており、高い衝撃性を備えているため、障害物に衝突しても跳ね返り、そのまま問題なく飛行を継続できる。このため、操縦において、障害物を避けることに神経を集中する必要がない。

 人間のそばを飛行、あるいは人間と直接接触したとしても、ケガをさせることもない。

 機械設備内部の点検においても、通常のドローンの場合、コンパスエラーが生じ、安定した飛行が実現できないが、「ELIOS」は独自のフライトコントローラー(制御装置)を搭載しており、金属の多い空間でも安定した飛行を実現できる。

 暗闇の空間を点検する時には、高輝度のLED照明が照らし出すため、外部の照明は不要で、ドローンの前部と上部、下部に搭載された高効率LEDが均等に周囲を照らす。照度は、コントローラーから遠隔操作で9段階調整が可能だ。カメラヘッドのチルト角を変えると、それに合わせてライトの方向が調整され、常に適度な明るさを保つ。

 「ELIOS」の無線通信機器システムは、安定した双方向の長距離デジタル信号伝送が可能だ。例えば、密閉ボイラーの内部を調べる時でも、パイロットは安全なマンホールの入口の横に立ったまま、「ELIOS」を100mを超える距離まで飛ばすことができる。

 フルHDカメラは、1920×1080ピクセルの30フレーム/秒で、照度が低い空間でも、しっかりとした映像を残すことができる。

 カメラ視野角は、水平視野角130°、垂直視野角75°をカメラヘッドを上下に動かした場合の合計水食視野角は、215°までカバー可能だ。赤外線サーマルカメラも搭載しており、目では見ることができない劣化を事前に発見する手助けにもなる。

 また、オリジナルソフトウェアの「Flyability Inspector」を使用すると、「ELIOS」が撮影した映像をフレーム毎に振り返ることができるだけではなく、ログ(SDカード)から貴重な飛行情報を得ることが可能だ。点検対象物を確認できるほか、業務に関係がある静止画像だけを抽出することも可能だ。

同時に、赤外線サーマルカメラで撮影した映像を、フルHDビデオ映像に重ねて表示させ、別角度での調査にも対応する。

 さらにフライアビリティ社は昨年9月、「ELIOS」の機能を向上した「ELIOS2」を発売した。

 「ELIOS2」は従来機種の「ELIOS」の機能に加え、新たな機能が加わった。

 7カ所のセンサーを用いて、壁面の距離を一定に保つことができるほか、ホバリングや複雑なスペースでの飛行が可能となった。また、ひっくり返ってもプロペラのスピード、回転方向を直ちに修正して、元の位置に戻るため、操作に不慣れな人でも、飛行させることができる。

 新たに搭載した4Kカメラ、赤外線カメラ、産業用ドローンの中で、最も強力で調光可能なLEDライト、防塵ライトにより、高い撮影性能を実現している。また撮影時にガードが映りこまないように、カメラ部分の前面は新たにオープンな構造とした。同時にフルHDリアルタイム映像伝送により、現場の映像を詳細に確認できる。

 新たに搭載された静止画(JPEG)撮影機能、歪曲した映像の平面補正機能、対象箇所の長さが計測できる2D測定機能、3Dモデリング作成機能により、計画から報告書作成まで、一貫したサポートが可能だ。


高精細な画像を取得

 「ELIOS」のカメラで撮影された画像を確認すると、高精細な画像を得ることができる。細かなクラックや亀裂、またトンネル内のアンカーボルトなども見ることもできる。

 人の目視では、接近できない箇所にも入り込んで、撮影できる。もちろん、これまで人が行くことができずに目視ができなかったフレアの先端をドローンで撮影して、その画像により、これまで見ることができなかった箇所を確認できる。

 ブルーイノベーションでは、「ドローンで撮影した動画は、人による点検に代わる」と断じる。

 「ELIOS」の活用により、安全性と作業効率向上に加え、コスト削減というメリットがある。

 ブルーイノベーションのドローンによる点検サービス


 安全性では、「ELIOS」を使用すれば、どのような屋内環境でも、目視による遠隔調査を行うことができるため、作業員が危険な場所に立ち入ったり、危険な状況に直面する必要はない。

 「ELIOS」を使用すれば、短時間に点検の準備を終えることができ、これまで数日間かかっていたような作業でも、数時間で終えることも可能だ。

 また「ELIOS」の活用により、足場や高所クレーンが不要になり、それらにかかる費用を削減できる。「ELIOS」の操作に必要な人数は1台につき2~3人で済むため、人件費の削減にも貢献する。

 ブルーイノベーションでは、使用用途に応じた、ドローン活用について、機種選定、撮影方法のほか、実際の活用と撮影された画像データの処理まで、トータルサービスを提供している。


プラントの様々な箇所の点検に使用

  「ELIOS」はこれまでに様々な設備の点検で使用されてきた実績がある。

①電力会社・製鉄会社のボイラー点検
 電力会社・製鉄会社のボイラー点検では、足場を組むなど、膨大なコストをかけていたボイラー点検において、不具合箇所が、どこにどの程度あるのかをドローンで確認できるか否か、評価した。

 その結果、重点的に点検したい箇所はすべて見ることができ、定期修繕前のアセスメント手段としては十分であることが分かった。

②工場での配管内・煙突内の点検
 工場での配管内・煙突内の点検では、これまでマンホール(小窓)からカメラを入れて撮影する手法で対応してきたが、限られた部分しか点検できなかった。

 しかし「ELIOS」を活用した結果、重点的に点検したい箇所はすべて見ることができ、定期修繕前のアセスメント手段として、十分であることが分かった。

③建物地下ピット内の点検
 地下ピットは天井高が低く、また有害な気体が充満している可能性もあるため、人の代わりにドローンで点検が可能かどうかを確認した。

 その効果としては、今までは、作業員が過酷な環境下で点検を行っていたが、ドローンでの点検では、水漏れ、壁のクラックや損傷などを短時間で効率よく撮影・確認することができた。④製紙パルプと製紙工場のタンクの点検

 従来、人間がタンクの中に入り点検を行っていたが、「ELIOS」の活用により、人間が中に入らずに、点検が可能になった。今後、「ELIOS」を緊急転換の道具として、導入することも検討されている。

 これらの他、橋梁の橋桁点検で使用された実績がある。

 橋梁でも、橋桁はGPSが入らないことが多い。しかし「ELIOS」を活用することで、橋梁の橋桁の中や送電ケーブルの上部の確認が可能だ。


3省連絡会議のプラントのタンク点検の実証に参加

 ブルーイノベーションでは、プラントの点検分野を重視しているが、その理由は、プラントの保全担当者が高齢化とともに減少する中で、いつまでも多くの人手をかけた点検ができるわけではない。

 そうした中で、ドローンを活用して、限られた要員でプラントの点検が適切に行えるようになれば、そのメリットは大きい。

 こうした中で、消防庁、厚生労働省、経済産業省による「石油コンビナート等災害防止3省連絡会議」は、昨年3月に「プラントにおけるドローンの安全な運用方法に関するガイドライン」を策定、そして今年3月にはガイドラインの改訂が行われた。

 昨年3月にまとめられたガイドラインでは、プラントの検査対象が屋外に限定されていたが、改訂では、屋内を対象としたガイドラインが策定された。

 ガイドラインの策定とその改訂は、プラントの設備点検における、ドローンの活用を活発化させることが期待される。

 そして、ブルーイノベーションは、ガイドラインの屋内での点検の実証に参加した。この実績を武器に、ドローンを活用したプラント設備点検に、今後も本格的に取り組む。



㈱重化学工業通信社
 

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