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 2021.4.27
プラント設計の生産性を向上する「AutoCAD Plant 3D」
ジェイコフが独自のカスタマイズで多様化するニーズに対応

 プラント設計において、3次元CADが不可欠な時代になった。3次元CADの普及に伴い、図面とともに属性データのやり取りも日常的に行われている。こうした時代を迎え、重視されるのがCADデータの互換性だ。この問題にオートデスクのプラント業界向け設計CADツールである「AutoCAD Plant 3D」は、カスタマイズによる対応を可能にしている。その機能を柔軟に活用することで、高い生産性が実現されるが、プラント設計で長年の実績を持つジェイコフは、「AutoCAD Plant 3D」を活用し、生産性を高めながら、顧客の複雑な要求にも的確に対応している。

 下水処理設備や発電プラントなど、主にインフラ施設の設計を手掛けるジェイコフ(本社:大阪市)。同社が設立されたのは2000年だが、以後20余年間にプラント設計は大きく変わった。2次元CAD全盛の時代から、3次元CADの時代へと変わり、3次元CADも「図面を描く」時代から、図面を情報として扱うように進化した。

 これら一連の進化は、CADの技術的な進歩、設計者のノウハウの蓄積、そしてCADデータをプラントの維持管理にも活用しようとするプラントオーナーの意向に応えることにより実現されてきた。この進化の過程において、時代の一歩先を行くプラント設計を実現してきたのがジェイコフだ。


本格的な3D対応を目的に「AutoCAD Plant 3D」を導入

 ジェイコフが設立された2000年当時、プラント設計の主流は2次元CADだった。砂村和彦社長も「AutoCAD LTが全盛の時代だった」と振り返る。

 
  ジェイコフ 砂村社長(左)と轟部長(右)
 そんな時代ではあったが、徐々に3次元CADが世の中に広がり、ジェイコフも「これから3Dの時代が訪れるのではないか」と、感じ始めた。

 そこでジェイコフでは、2次元で図面を描き、データベースから3次元化するソフトを導入するなど、
3次元への対応を進めて行った。

 当時は「2次元で十分に対応できるのに、なんで3次元で?」と訝る顧客も少なくなかった。そればかりか、3次元を提案しても「いらない」と一蹴されることもあった。それでもジェイコフは3次元の時代が訪れることを信じ、「3次元CADを活用し続けた」(前出、砂村社長)と言う。

 ジェイコフは、大胆とも言える取り組みで試行錯誤を繰り返し、提案を続けた結果、少しずつ顧客の反応が変わっていった。そんな中で、3次元データについて「これだったら、解かりやすいね」と言う顧客が徐々に出始めた。

 こうした顧客の反応を見て、ジェイコフも3次元CADに手応えを感じ、それまでの2次元データを3次元化するのではなく、本格的に3次元CADを導入することに決め、2014年に初めて「AutoCAD Plant 3D」を導入した。


独自のカスタマイズで互換性を実現

 「AutoCAD Plant 3D」を導入し、解りやすいCAD図面を描くことで、顧客に浸透していったジェイコフだが、3次元CADが普及すると、顧客の要求レベルも高くなった。

 そうなると、従来通りに解りやすい図面だけを納入していたのでは、十分に満足が得られなくなり、CAD図面に情報が求められるようになった。しかも顧客は必ずしも「AutoCAD Plant 3D」を導入しているわけではない。ここで顧客の保有するソフトとの互換性の問題に直面した。

 こうした顧客の変化に対して、ジェイコフの創業以来技術を担当してきた轟英敏部長は「御客様の望む情報をどういう形で表現すれば御客様が受け入れやすいかを考えた」と言う。その問題を解決したのが「AutoCAD Plant 3D」の持つ、カスタマイズの許容性だった。

 そこでジェイコフはオートデスクの3Dデザインレビューソフトウェア「Navisworks」を活用した。「Navisworks」は、様々なCADのフォーマットに対応できるソフトで、轟部長は「御客様には、『Navisworks』で閲覧してもらい、そこで情報にさわってもらうようにした」と言う。

 実際、「Navisworks」では、「AutoCAD Plant 3D」の入力情報を確認できる。これにより、立体画像だけであった3Dに情報を持たすことが可能になった。

 砂村社長も「今の時代は、絵があっても情報が伴っていなければ意味がない。顧客の持つソフトとのCAD互換性を確保して、3Dで確認してもらえることのメリットは大きい」と強調する。

 カスタマイズ性については、他にもメリットがある。

 「AutoCAD Plant 3D」では、配管や部品のカタログのライブラリが搭載されているが、このデータは必ずしもユーザーの要求に応えるものではない。そこでカスタマイズするのだが、長年のデータの蓄積により多様なカスタマイズに対応できるようになった。

 カスタマイズが自由にできるようになると、ジェイコフの顧客にも新たなアプローチができるようになる。「当社が、ここまでカスタマイズをサポートできますから、『AutoCAD Plant 3D』を導入してください」と顧客にアピールできる。ここで顧客が「AutoCAD Plant 3D」を導入すれば、顧客との関係を深めることにつながる。しかも「AutoCAD Plant 3D」の年間サブスクリプション契約の価格は22万円(2021年4月時点)と手頃だ。この点も顧客に言いやすい理由になった。

 またオートデスクは、オートデスク・デベロッパーズ・ネットワーク(ADN)により、カスタマイズをサポートしており、ここで、APIを公開している。ADNを年契約すれば、カスタマイズがより容易になる。このうえ、App Storeも用意されており、ユーザーがカスタマイズした機能をここで販売できる。

 オートデスクがカスタマイズに積極的に対応していることは、ユーザーの様々なメリットにつながっている。


点群データ処理にも対応

 ジェイコフでは、プラントの新設の設計にも対応するのと同時に、改造案件についても3次元CADで対応している。この改造案件においても、「AutoCAD Plant 3D」が活用されている。

 
  ジェイコフのエンジニアリングオフィス
 改造案件ではCADデータが無いプラントが対象になることも少なくない。この場合、ジェイコフでは、米国のFARO社の3次元レーザースキャナーにより、様々な点群データを取得。

 そこで得た複数のデータをFARO社の「SCENEソフトウェア」で結合。そのデータをエリジオン社の点群処理ソフト「InfiPoints」で編集する。

 こうして取得したデータをオートデスク社のリアリティキャプチャソフト「ReCap Pro」に取込み、写真モードと点群モードに切り替えられる機能などを活用して、データを調整する。そうして得られたデータを「AutoCAD Plant 3D」で読み込み、改造のための設計を行う。

 複数のソフトウェアを介して、点群データが「AutoCAD Plant 3D」で活用できるようになるが、轟部長は「このやり方が今現在の当社の主流」と言う。

 日本のように先進国で経済が成熟している国では、CADの導入以前に設計されたため、CADデータが無いプラントも少なくない。そうしたプラントの改造については、3次元レーザースキャナーでスキャニングを行い、点群データをCADデータとして活用する方法は、このところニーズが高まっている。ジェイコフは、こうしたニーズにも柔軟に対応している。

 また最近は、プラントオーナーがDX(デジタル・トランスフォーメーション)化を求めるケースも出始めている。そのニーズは、プラントの維持管理までを3次元データ上で実施しようという試みでもある。このニーズの中には、PC上に造られたヴァーチャルプラントで運転管理を行うことも検討されている。

 この試みに対応するには、点群処理など、3次元データのハンドリングに伴う様々なツールとノウハウを駆使する必要があるが、こうした試みにジェイコフは今後も取り組む方針だ。


【連絡先】
 株式会社ジェイコフ
 〒550-0012 大阪市西区立売堀1-3-13 第三富士ビル9F
 TEL:06-4390-4774


【取材協力】
 株式会社大塚商会
 特定CADソフトプロモーション課
 〒102-8573
 東京都千代田区飯田橋2-18-4
 TEL:03-3514-7819
 


 オートデスク株式会社
 〒104-6024
 東京都中央区晴海1-8-10
 晴海アイランドトリトンスクエア オフィスタワーX 24F
 Email: mfg.inside@autodesk.com

 



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