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 2021.11.22
 ENN11月25日号 特集:「プラントライフサイクルをカバーする、エンジニアリングIT」
 日本インターグラフ(Hexagon PPMディビジョン)
 大坂 宏 代表取締役社長に聞く


 EPCとO&Mを両輪に、プラントライフサイクルの効率向上を目指す
 Hexagon ブランドの日本市場への浸透に注力

スウェーデンから生まれたグローバル企業、Hexagon。そのPPMディビジョンである日本インターグラフは、EPC向けに3次元CADなどのエンジニアリングソリューションを長年に渡り提供してきたが、最近はプラントのO&Mにフォーカスしたポートフォリオの拡充にも取り組んでいる。2019年に買収した運転管理システム「j5」に加え、米インフォア社からEAMシステム「Infor EAM」を獲得。これにより、プラントのライフサイクルをカバーするソリューションのラインナップが完了したことになる。Hexagon PPMが目指す、プラントライフサイクルソリューションについて、大坂宏代表取締役社長に聞いた。



大坂 宏(おおさか ひろし)氏

1979年新潟大学工学部化学工学科を卒業。石油精製エンジンニア、産業用リアルタイムシステム構築システムエンジニアを経て、1992年にプロセスエンジニアリングとシステムエンジニアリングを融合させたエンジニアリング・サービスを提供する大坂システム計画を創業。2009年、国内にj5を導入する。現在は国内O&Mビジネスの責任者を務めるとともに、コンサルタントとして製造業の生産現場に入る。2021年4月、日本インターグラフ(Hexagon PPMディビジョン)代表取締役社長。




















ENN Hexagonとは、どのような企業グループなのでしょうか。

大坂 9事業部門(Agriculture、Autonomy & Positioning、Geospatial、Geosystems、Manufacturing Intelligence、Mining、PPM、Safety & Infrastructure、Xalt Solutions)で、One Hexagonなのですが、全世界に2万1,000人の従業員がいます。

グループとしては、センサーやソフトウェアなどを活用しながら、AIやマシンラーニングの技術を取り入れて、人間が介入する機会を減らした、自律型のシステムの構築が目標です。

ENN 幅広い事業を手掛けていますが、PPM事業では、どのような事業を担っているのですか

大坂 グループとしては、農業、鉱業、製造業から建築、都市インフラなど、幅広い事業分野に取り組んでいますが、各事業部門からの技術、業界知識と経験を統合するのが目指す方向の一つです。

これらの中でPPM事業では、製造業の御客様の大量のデータを処理して、自律化を通して、効率、品質、利益の向上を図る役割を担っています。


EPCとO&Mの二本柱で取組

ENN 顧客の大量のデータを処理するために、どのようなソリューションをお持ちなんですか。

大坂 これまで、EPCに関するソリューションの提供が大半を占めていましたが、新たな柱であるO&Mへの取組を強化する方針で、当面は、EPCとO&Mの2本柱で取り組みます。

同時にHexagonの知名度も向上しなければなりません。EPCでは、インターグラフというブランドは浸透していますが、Hexagonというブランドの浸透度は十分とは言えません。これから本格的に注力するO&Mや、建設業向けのAEC(Architecture, Engineering & Construction)では、Hexagonというブランドを浸透させるための取組を重視しています。

ENN 2019年1月に、運転管理システムの「j5」を買収し、今年10月には、インフォア社からEAM(企業資産管理)システムを事業買収が完了しました。ポートフォリオにおいても、O&Mを重視されています。

大坂 Hexagonは元々、センサーメーカーで、管理ソフトを持っていませんでした。今回、EAMシステムを獲得したので、情報を集め、分析し、管理するフィードバックループが完結します。「j5」の買収により、運転管理を押さえた後、設備管理の核となるEAMシステムの獲得を重視していましたから、戦略的に買収しました。

ENN かつては、EPCコントラクターを中心に事業展開していましたが、最近はオーナーオペレーターに軸足を移しているということですね。

大坂 : プラントのライフサイクルを捉えた場合、建設に係るEPCと同様に稼働後のO&Mも重要で、ここではオーナーとのやり取りが必然的に増えます。

オーナー側への取組も重視していますが、EPC分野でも引き続き、取組を強化しています。今年9月に、Jovix社を買収したのですが、この会社はRFIDソリューションで多くの実績があります。このところ、RFIDソリューションの引合が増えているのですが、マテリアルのハンドリングやトレーサビリティの要求に対して応えるうえでも重要な買収だったと思います。

当社には、資機材管理システムとして、「Smart Materials」がありますが、船積みやデリバリーを通して、資機材がどこにあるかを管理するために、RFIDが必要です。

すでに、EPC事業者の中には、「Smart Materials」とJovixの連携を取っているケースもあります。こうしたニーズは今後、高まると予想されますから、買収の意義は大きいと思います。


EPC事業で強まる中小プロへの傾斜

ENN 最近のEPC事業の状況はいかがですか。

大坂 : このところ、大型プロジェクトが減少して、中小型のプロジェクトが中心になってきています。

このため3次元CADも、大型プロジェクト対応の「Smart 3D」から、中小型プロジェクト対応の「CADWorx」や「BricsCAD」へ、ニーズが移行しています。また国内プロジェクトを中心に展開されている御客様には、「EYECAD」も活用していただいています。

またEPCコントラクターは最近、従来以上にプロジェクトの採算を重視されていますから、プロジェクトの予算管理を含むプロジェクトマネジメントに対応する「EcoSys」へのニーズも高まっています。

かつては、大手のエンジニアリング企業やプラントメーカーを中心に導入されたのですが、最近では中堅のエンジニアリング企業も「EcoSys」に高い関心をお持ちです。

ENN 競合のアヴィバの3次元CAD「PDMS」が2024年にエンドオブライフを迎えられます。この機会は、Hexagonへの乗り換えのタイミングにもなり、競合各社もここを狙っていますが、御社についてはいかがですか。

大坂 この機会は大きなチャンスと捉えていて、積極的に営業しており、徐々に成果も上がっています。引合やお問い合わせもいただいているので、問合せにも積極的に対応しています。

ENN EPCとO&Mの売上比率はいかがですか。

大坂 : 新規案件だけを見れば、O&Mの方が多いですね。ただO&Mで難しいのは、御客様がITに馴染みが少ないことです。このため、当社でエキスパートを育て、プロジェクトをまとめるために、御客様と会話しなければなりません。この点の難しさを感じています。


プラントの運転効率化にも貢献

ENN 石油会社や石油化学メーカーは、経済産業省が推進するスーパー認定事業所の認定取得に取り組んでいますが、この点では、活躍の場も多いのではないでしょうか。

大坂 この点では、「j5」で運転管理を支援するなど、当社も設備管理のスマート化に貢献しています。

石油会社では、製油所当たり1日約100件の工事があり、20~30の構内業者が工事を行っています。これらをすべて紙で管理していたのですが、そのデジタル化を当社のソリューションが支援しています。これらはモバイルでも可能になります。工事管理をデジタル化することはスーパー認定事業所として認定されるための重要ポイントでもあると考えます。

ENN 世界的が脱炭素に向かっていますが、カーボンニュートラルへの取組はいかがですか。

大坂 直接、カーボンニュートラルを支えるソリューションは、当社にはありません。

しかし運転管理システム「j5」の活用により、運転が改善すれば、省エネ効果もあり、結果的にCO2の排出削減につながります。「j5」はすでに、石油業界の9割、エチレンプラントの7割に納入しており、国内納入実績は100事業所に近付いていますから間接的にカーボンニュートラルに貢献していると言えます。最近は、より機能が充実して、CMMS(コンピュータによるメンテナンス・マネジメント・システム)とも連携が取れるようになり、プラントの運転管理・設備管理の改善にもつながります。従来以上に効率向上が可能になりました。

EPCとO&Mの連携は今後もより重要になってくると思いますから、これからも注力します。

ENN ありがとうございました。



           





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